平成23年度秋期ネットワークスペシャリスト午後I 問1

ネットワークスペシャリスト試験
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今日は、平成23年度秋期ネットワークスペシャリスト午後I 問1を解こうと思います。

問題文および模範解答(解答のみ、解説はありません)は下のリンクからどうぞ。
※IPAのサイトで公開されているPDFにリンクしています

問題文はこちら】【模範解答はこちら

各問解説

設問1

デジタル信号を、アナログの搬送波を変調することによって伝送する方式を、ブロードバンド伝送といいます。広帯域回線のこともブロードバンドといいますが、それとは別の用語です。

光ファイバで通信を行う規格には 1000Base-SX1000Base-LX1000Base-ZX などがありますが、このうち波長850nm(短波長)レーザーを使用するのは 1000Base-SX です。1000Base-SXは問題文にもある通りマルチモード光ファイバを使用します。光ファイバの一般的な性質として電磁的ノイズには強く、他の電気信号ケーブルの近くに配線しても悪影響を受けません。

ちなみに1000Base-LX は波長1350nmレーザー、1000Base-ZXは波長1550nmレーザーを使用します。

文脈から、通信を行っているアプリケーションを識別する狙いがあると思われることと、TCP・UDP両方で使えること、『送信元及び宛先の』という記述があることから『ポート番号』となります。

厳密に言えば『パケット』はネットワーク層のデータ単位のことなので、ヘッダにはポート番号が含まれていませんが、ここではTCPやUDPのヘッダも含めたものと解釈します。

SNMPエージェントからマネージャーに対して送信される状態変化の通知のことをトラップ(TRAP)といいます。

デジタルデータの著作権保護のための技術として、DRM(=Digital Rights Managementデジタル著作権管理)があります。

設問2

(1)

1000Base-Tの最長距離は100mです。

(2)

問題文には『親機は伝送路の集線箇所に接続(p.3)』とあります。図1をみて集線箇所を探せば簡単に判ります。

製品Pは電力線を伝送路として使用します。Xホテル内の電力線がすべて集まっているのは、主分電盤です。

製品Cはテレビアンテナ用同軸ケーブルを伝送路として使用します。テレビアンテナ用同軸ケーブルがすべて集まっているのは、分配器または増幅器と分配器の間です。

(3)

製品Pは電力線、製品Cはテレビアンテナ用同軸ケーブルを伝送路として使用します。電力線は本来信号用ではなく、50~60Hzの低周波交流での使用が前提で、電磁的ノイズについても考慮されていません。それに対し、テレビアンテナ用同軸ケーブルはもともとVHF・UHFなどMHz~GHzの信号を伝送するためのものなので高周波を伝送する効率がよく、また芯線をを外部導体が覆うシールド構造のため、ある程度の電磁的ノイズ耐性があります。同軸ケーブルは10Base5など古い規格のイーサネットケーブルでも使用されています。

模範解答は30字以内という制限のため『伝送路が通信特性に優れている同軸ケーブルであること』というざっくりした書き方になっていますが、なぜ同軸ケーブルの方が優れているのかについても押さえておくのがよいでしょう。

(4)

問題文には『製品Vでは電話交換機と主配線盤間の電話配線を中継する形で親機を接続する(p.3)』とあります。製品Vには電話機能には干渉しないので、通常は電話交換機と主配線盤間の電話信号はそのまま通過させていると思われます。しかし親機が故障した場合に電話交換機と主配線盤間で電話信号のやりとりができなくなると、ホテル内のすべての電話が使用不可になります。このような事態を避けるため、製品V(親機)故障時に電話信号を素通しする機能が必要となります。

設問3

(1)

これは単純な計算です。親機1台に収容できる子機が25台なので、

親機が1台なら子機は最大25台
親機が2台なら子機は最大50台(25×2)
親機が3台なら子機は最大75台(25×3)
親機が4台なら子機は最大100台(25×4)

となります。

子機は81台なので、親機は最少で4台必要になります。

(2)

問題文中から関連しそうな部分を拾っていくと『宿泊客にVODサービス及びインターネットアクセスを提供する(p.2)』『V親機およびV子機には、ポートA及びポートBの二つのLANポートがある(p.3)』『ポートAとポートBには別々のVLANが割り当てられ、V親機とV子機間の通信ではポートBの通信が優先されている(p.4)』などの記述があります。

まず、ポートAとポートBのうち、一方をVODサービス用、もう一方を宿泊客のインターネットアクセス用とすることは容易に思いつくでしょう。では、どちらをどちらに使用するかですが、問題文をよく読むと『VOD配信サーバとVODセットトップボックス(STB)間の通信には、十分な通信帯域を確保するとともに、通信遅延のゆらぎを抑える(p.2)』という記述があります。よって、通信が優先されるポートBをVOD用とし、ポートAをインターネットアクセス用に使用するのがよいでしょう。

また、問題文には『(複数台の)V親機のLANポートをL2SWに接続して束ねる(p.4)』とありますので、V親機をVOD配信サーバに直接接続するのではなく、V親機およびVOD配信サーバをL2SWの同じVLANのポートに接続することにします。

ここまでを図中に書き込むと、

客席201では、
V子機のポートA と PC を接続
V子機のポートB と STB を接続

設備室では、
各V親機のポートA と L2SWのルータと同じVLANのポート を接続
各V親機のポートB と L2SWのルータとは違うVLANのポート を接続
VOD配信サーバのポートの1つ と L2SWのルータとは違うVLANのポート を接続

となります。これでインターネット接続およびVOD配信のための接続はできました。
しかしこれでは、VOD配信サーバのポートの1つと、L2SWのルータと同じVLANのポートが1つ余っています。再度問題文を読み直すと『インターネット経由で、VOD配信サーバにコンテンツを蓄積する(p.2)』という記述があります。このため、VOD配信サーバはインターネットに接続できる必要があるのです。

よって、

余っていた VOD配信サーバのもう1つのポート と L2SWのルータと同じVLANのポート を接続

すれば完成です。VOD配信サーバの2つのポートの役割についてはなにも説明がないので、どちらをどちらにつないでも構わないでしょう(とはいえ、わざわざ線が交差するように記述するのはひねくれていますが)。

(3)

設問に『ルータの通信制御に着目して』とありますので、問題文の該当部分を読み直します。

『ルータは、中継するパケットのヘッダから、TCPまたはUDPのプロトコル種別、送信元及び宛先の [b(ポート番号)] とIPアドレスを参照して、トラフィックをトランスポート層での管理単位(以下、フローという)として識別する』

『インターネット接続回線の混雑時には、各フローの占有通信帯域が均等になるようにパケットの転送を制御する。混雑していないときには、制御を行わない』

とあります。期待されているのは『PC1台あたりの通信帯域がほぼ同じ』ことですが、ルータの通信制御ではPC毎ではなく『各フローの占有帯域が均等になるように』制御されています。そして宛先のIPアドレスが異なればフローも異なるものとして識別されるので、PCの利用をブラウザに限っても接続先のサーバ毎にフローは別のものになってしまいます。つまり、たとえば複数のブラウザやタブでそれぞれ別のWebサーバに接続しているPCの方が、より広い帯域を確保することになってしまうのです。よって、PC1台あたりの通信帯域がほぼ同じになるためには、PC1台あたりの最大同時フロー数が同じになる必要があります。

設問4

機器配置について

要件として『設備室内以外の配線工事も極力回避する(p.2)』とありますが、無線LAN構成では『各階の廊下にアクセスポイントを配置する(p.2)』ので、廊下での配線工事が発生してしまい、要件を満たしません。

解答は30字以内とあるので『無線アクセスポイントの設置に配線工事が発生する』となります。

通信特性について

これは問題文中に明確な根拠になる記述があるわけではないので、一般常識から考えます。

無線LANのアクセスポイントを廊下に設置する場合、どうしても端末との間はドアや壁で遮られることになります。これは無線通信にとって良い条件とは言えず、通信速度・品質の低下が懸念されます。この状態で複数の端末に対して映像を一定以上の品質を確保して送り続けるのは難しいでしょう。

これも30字以内でまとめて『通信帯域又は通信遅延の条件を満足できないことがある』となります。

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