平成20年度秋期テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後I 問3

ネットワークスペシャリスト試験
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今日は、平成20年度秋期テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後I 問3を解こうと思います。

問題文および模範解答(解答のみ、解説はありません)は下のリンクからどうぞ。
※IPAのサイトで公開されているPDFにリンクしています

問題文はこちら】【模範解答はこちら

各問解説

設問1

OSI参照モデルは以下のようになっています。

7アプリケーション層
6プレゼンテーション層
5セッション層
4トランスポート層
3ネットワーク層
2データリンク層
1物理層

このうち、TCPはトランスポート層に該当します。

TCPの特徴は、通信相手との間にコネクションを確立することによって信頼性の高い通信を実現することにあります。その通信は

コネクション確立フェイズ…3ウェイハンドシェイクなどによりコネクションを確立する

データ転送フェイズ…コネクションが確立した後、実際にデータを転送する

コネクション終了フェイズ…データの転送が終了した後、確保していたリソースを解放する

の3段階に分けて考えられます。

東京の本社からのpingコマンドに対する応答の所要時間が、名古屋営業所および大阪営業所では20ミリ秒、札幌営業所および福岡営業所では48ミリ秒であることから、本社から遠距離になるほど遅延が大きいことが判ります。

設問2

K君の説明から、営業所からの読み込みの遅さの原因として『ファイルサーバへのアクセスの集中によって処理時間がかかるようになった』を想定していることが判ります。そこで深夜(営業時間外)のファイルサーバへの負荷が小さい時間帯にアクセスし読み込み時間を比較したのでしょう。

設問3

(1)

パケットサイズを大きくすると、その分回線速度による伝送時間の差が大きくなります。このテストで測定したいのは通信が往復するのにかかる時間なので、回線速度の影響を受けにくいようにパケットサイズを小さくしたと考えられます。

(2)

a

ファイルサイズが\(1\times 10^6\)バイト=(1\times 10^6\times 8)ビット、回線速度を1Mbpsとすると、データ送出そのものにかかる時間は

\((1\times 10^6\times 8)\div(1\times 10^6)=\) 8秒

です。

しかし通信にかかる時間はこれだけではなく、『サーバがデータを送出してから、次のRead(相手からの受信確認および次のファイル読み出しコマンド)がサーバに届くまでの待ち時間』≒『次のデータの送出を開始できるまでの時間』( t )を考えなければなりません。

一度に転送できるファイルデータの量を\(3\times 10^3\)とすると、すべてのデータを転送するのに、

\((1\times 10^6)\div(3\times 10^3)=\) 334回

のデータ送出が発生しますので、1回目のデータ送出から最後のデータの受信確認までに『次のRead待ち』は333回となります。1回の『次のRead待ち』時間を t=48ミリ秒 とすると、合計の待ち時間は

\(t\times 333=48\times 333=) 15984 ミリ秒16秒

となります(最後の回の受信確認待ちを含める考えもありますが、有効数字を2桁とすると答は16秒で変わりません)
実際に通信にかかる時間はデータ送出にかかる時間と待ち時間の合計なので、

\(8+16=\) 24秒

となります。

b

元のファイルデータのサイズが\(3\times 10^3\)バイト、WAN高速化装置がまとめるデータ量が\(3\times 10^4\)バイトなので、元のファイルデータ10個分を1つにまとめて送信することができることが判ります。

代理応答は元のファイルデータサイズでの転送1回毎に発生するので、代理応答10回ごとに10回分のファイルデータを一括して伝送することになります。

(3)

(2)-aから判るように、データ送出にかかる時間より、『次のRead待ち』時間の方が長くかかっているため、回線速度を上げても全体の伝送時間はあまり短くなりません。

たとえば(2)-aの例で福岡営業所の回線速度を100倍や1000倍にしても、データ送出そのものにかかる時間は短くなりますが受信確認待ち時間の合計は16秒のままのため、ファイル転送にかかる時間は全体で16秒(約30%減)より小さくなることはありません。

設問4

圧縮装置の故障により10回分のデータを1まとめにすることが出来なくなっても通信を継続する場合は、圧縮装置がない場合と同じ手順で通信する必要があります。

そのためには、

故障した側の圧縮装置は、自動的に通常のケーブル接続と同じ状態になる

故障していない側の圧縮装置は、対向側の装置の故障を検出し、(通常のケーブル接続と同じ手順で)通信を継続する

ようになっている必要があります。

感想

通信速度(単位時間あたり通信路に流し込めるデータの量)と伝送遅延(経路の端から端までデータが移動するのにかかる時間)で混乱しそうな問題です。IPAが公開している講評には設問3(2)aでパケットの伝送時間を考慮しない解答があった、とありますが、これは問題文中の図が悪いような気がします。

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