平成24年度秋期ネットワークスペシャリスト午後I 問2

ネットワークスペシャリスト試験
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今日は、平成24年度秋期ネットワークスペシャリスト午後I 問1を解こうと思います。

問題文および模範解答(解答のみ、解説はありません)は下のリンクからどうぞ。
※IPAのサイトで公開されているPDFにリンクしています

問題文はこちら】【模範解答はこちら

各問解説

設問1

(1)

PoE(Power over Ethernet)は、2003年にIEEE 802.3afとして標準化されています。
拡張規格として2009年にIEEE 802.3at、2018年にIEEE 802.3bt が標準化されています。拡張規格では、より多くの電力供給が可能になっています。これらの規格は下位互換性を保っており、afが対応していることはat,btでも対応しており、atが対応していることはbtも対応しています。

atは30.0Wの給電が可能になり、btではさらに最大99W(4PPoE利用時)の給電が可能になりました。

イ、ウ

接続時には PSE 側が、相手が PoE 対応機器であるかどうかを判別します。
PD側は分類電流によって要求電力を伝え、それに従ってPSEは給電します。

PoEでは、ケーブルのどのピンを給電に使用するかによって3種類の方式があります。

方式名給電ピン
オルタナティブ(Alternative)A1, 2, 3, 6
オルタナティブ(Alternative)B4, 5, 7, 8
4PPoE8本すべて

Alternative B についての説明なので、解答は 4,5,7,8 となります。

アでの説明の通り、30Wの給電が可能なのは IEEE802.3atIEEE802.3bt です。ただしこの試験が行われた2012年にはまだ IEEE802.3bt が標準化されていなかったので、リンク先の模範解答では IEEE802.3at のみとなっています。

(2)

問題文中から関連する部分を探すと、

L2SW同士の接続については『このL2SWは、スタック接続が可能であり、スタック専用のポートを使用して構成する。その方法は、1台のL2SWのoutポートと別のL2SWのinポートを接続し、リンクを構成するというものである(p.7)』

とあります。スタック接続とは複数台のスイッチを相互に接続して全体として1台のスイッチであるかのように動作させる方式です。この問題の機器のように専用のin・outポートがある場合は、1つのリングになるように接続します。一般のポートでループを作るのと違ってSTPなどの設定は不要です。

図2には3台のL2SWが描かれているので、上段からL1、L2、L3とすると、

L1のin と L2のout
L2のin と L3のout
L3のin と L1のout

と接続すればよいことになります。

APの接続については『APの接続は、物理的に重ねた上段のL2SWから順に、そのL2SWの給電能力の限界まで行うことにした。そして、各L2SWでは、8番目のポートから降順に接続し、残りのポートには有線LAN用機器を接続する(p.7)』

とあります。『給電能力の限界まで』とあるので、さらに給電能力・消費電力についての記述を探すと、

『導入予定のL2SWは、各イーサネットポートに対して最大15.4W、装置全体では56Wの給電能力をもち(p.7)』
『導入予定のAPの最大消費電力は12W(p.7)』

という記述があります。

12×4 < 56 < 12×5

より、1台のL2SWには4台のAPを接続可能になります。

図2では、既に

L1のポート8 と AP1
L1のポート7 と AP2
L1のポート6 と AP3

が接続されています。条件の『上段のL2SWから順に(中略)8番目のポートから降順に』にしたがっていることが判ります。

次はAP4ですが、L2SW1台あたりAPを4台まで接続できるので、

L1のポート5 と AP4

を接続します。AP5もL1に接続すると給電能力の上限を超えてしまうので、

L2のポート8 と AP5

を接続します。

以上で完成です。

設問2

(1)

問題部によると『WLCとAPの間にはトンネルが構築される(p.8)』『モードB:制御用通信だけでなく、データ用通信も含めたすべての通信がトンネルを使用する(p.8)』となっています。

判りやすく言い直すと『APを使って通信する場合は、必ずWLCを経由する』ことになるわけです。

図1をよく見ながら、PC1からWLCを経由してサーバ1に至る経路を考えると、

PC1 → AP1 → L2SW1 → L3SW1 → WLC → L3SW1 → L3SW2 → サーバ1

となります。L3SW1を2回通っているのが不思議に思うかもしれませんが、WLCを必ず経由するのでこうなります。なお、図3上段からすると広域イーサ網を描く必要はないでしょう。

(2)

モードAでは『接続時の制御用通信だけがトンネルを使用し、データ用通信はノード間で直接行われる(p.8)』とありますので、データ通信が開始されてからWLCが停止してもノード間の通信には影響ありません。

よって解答は『データ用通信は WLC を経由していないので影響はない』となります。

(3)

再認証は、APに再接続する場合に必要です。よって『PCの再起動』によってPCとAPの接続が切れた場合や、『ローミング』によって接続先のAPを変更する場合に再認証されます。

設問3

(1)

設問2(1)でも触れたとおり、モードBでは『データ用通信も含めたすべての通信がトンネルを使用する』ので、WLCに障害が発生すると無線LAN経由の通信が一切できなくなります。

よって解答は『WLC の障害時に無線 LAN 経由の通信ができなくなるから』となります。

(2)

本社APもWLCで一元管理すると、当然管理対象のAPの台数も、処理すべきデータ量も増加します。よって検討すべき性能要件の1つが『WLCの処理能力』となります。

もう1つについては『B君は、WLCをBCに設置する構成のまでは問題があると考え、DCに設置する構成で設計をやり直した(p.9)』という部分がヒントになります。実際にどのような通信が行われるのか考えてみましょう。

問題文には『各拠点の社員は、DC内のサーバにアクセスして業務を行っている(p.6)』とあるので、本社・BCともにネットワーク通信は主にDCに対するもので、本社~BC間、本社内同士、BC内同士の通信は少ないものと思われます。

WLCがBCにある場合、本社内で無線LANを使用してDC内のサーバにアクセスしようとすると、データの経路は

本社 → 広域イーサ網 → BC内のWLC → 広域イーサ網 → DC内のサーバ

となります。
WLCの導入前ならば、データの経路は

本社 → 広域イーサ網 → DC内のサーバ

となっていたはずなので、WLCの導入によって(BCの)広域イーサ網を経由するデータ量が倍増する(同じデータが2回通る)ことになります。よって、検討すべき性能要件のもう1つは『広域イーサ網の帯域』です。

なお、B君の検討結果どおりWLCをDC内に設置した場合、本社からDC内のサーバへのアクセスは

本社 → 広域イーサ網 → DC内のWLC → DC内のサーバ

となり、広域イーサ網は1度しか通りません。
また、WLCをDCに設置した場合も、BCからDC内のサーバに対する通信は、

BC → 広域イーサ網 → DC内のWLC → DC内のサーバ

となり、やはり広域イーサ網をデータが往復することにはなりません。

(3)

(2)で説明したとおりです。解答は『本社無線 LAN の通信も BC を経由し,BC の広域イーサ網の通信量が増加する』です。

(4)

これも(2)で説明したとおりです。解答は『本社から DC への通信が,BC を経由しなくなる』です。

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