この記事では、『MathJax-LaTeX入門・レベル1』の内容を憶えた人向けに、より多くのコマンドを解説します。だいたい高校1,2年レベルの数学で使う式を記述できるようになります。
括弧
基本の括弧
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---|---|---|
\((数式)\) | (数式) | 小括弧(丸括弧)はそのまま記述します。 |
\(\{数式\}\) | \{数式\} | 中括弧(波括弧)には『ブロックを作る』という特別な機能があるため、中括弧そのものを表示したい場合は\{~\}と記述します。 |
\([数式]\) | [数式] | 大括弧(角括弧)はLaTeXコマンドのオプションを記述するときにも使用しますが、通常はそのまま記述します。 |
\(|数式|\) | |数式| | 絶対値記号は |(バーティカルバー)をそのまま記述します。 |
大きさの変わる括弧
\left~\rightコマンドを使用すると、中の式によって大きさが変わる括弧が表示できます。
書き方は、
\left左括弧文字
括弧の中の数式
\right右括弧文字
です。
※判りやすいように改行して3行で書きましたが、1行に続けて書いてしまっても構いません
例
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\[( \sum_{k=1}^n a_n )\] | ( \sum_{k=1}^n a_n ) | \left~\rightコマンドを使わないとこうなります。 |
\[\left( \sum_{k=1}^n a_n \right)\] | \left( \sum_{k=1}^n a_n \right) | \left( ~ \right) とすると、中の数式がちょうど収まるように大きな括弧が表示されます。 |
\[\left\{ \sum_{k=1}^n a_n \right\}\] | \left\{ \sum_{k=1}^n a_n \right\} | 大きな中括弧を表示したい場合は、\left\{~\right\}とします。 |
\left~\rightコマンドは、左右で使用する括弧の種類が違っていても構いませんが、かならず\leftと\rightを対にして使用しなければなりません。
例
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\[\left( \sum_{k=1}^n a_n \right]\] | \left( \sum_{k=1}^n a_n \right] | \left( ~ \right] のように、左右で違う括弧を使うこともできます。 |
\[\left( \sum_{k=1}^n a_n \] | \left( \sum_{k=1}^n a_n | \left~\rightコマンドは必ず対にして使用しなければなりません。 ※この例は文法エラーになっているはずです。 |
\[\left( \sum_{k=1}^n a_n \right. \] | \left( \sum_{k=1}^n a_n \right. | 括弧を左右のどちらかのみ表示したい場合は、表示したくない側の括弧文字として.(ピリオド)を記述します。 |
大型数学記号
高校数学レベルで使用する大型の数学記号について紹介します。
総和記号
総和記号は \sum コマンドで表示します。書き方は、
\sum_{下に表示する式}^{上に表示する式}
です。
例
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\[ \sum_{k=1}^{n}a_k \] | \sum_{k=1}{n}a_k | 基本的な記述例です。 |
\( \sum_{k=1}^{n}a_k \) | \sum_{k=1}{n}a_k | ソースの記述は同じですが、インライン形式ではこのようになります。 |
\[ \sum a_k \] | \sum a_k | 記号の上下の式を省略することもできます。 |
積分記号
積分記号は \int コマンドで表示します。書き方は、
\int_{積分範囲の下}^{積分範囲の上}
です。
例
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\[ \int_{n-1}^{n+1} f(x) dx \] | \int_{n-1}^{n+1} f(x) dx | 基本的な記述例です。\(dx\) には特別なコマンドがあるわけではなく、そのままdxと記述します。 |
\( \int_{n-1}^{n+1} f(x) dx \) | \int_{n-1}^{n+1} f(x) dx | ソースの記述は同じですが、インライン形式ではこのようになります。 |
\[ \int f(x) dx \] | \int f(x) dx | 積分範囲を省略することもできます。 |
文字装飾
ベクトル \(\vec{a}\) や否定 \(\bar{A}\) のように、文字を装飾する書き方についていくつか紹介します。
1文字の装飾
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\[f'(x)\] | f'(x) | 微分を表す\(f’\)は、そのままf’と記述します。 |
\[f^{\prime\prime}(x)\] | f^{\prime\prime}(x) | 二階微分は本来f”でもよいはずなのですがMathJaxでは\(f”\)と二重引用符が表示されてしまうので『 \(\prime\) 』を表示する\primeコマンドを使用します。 |
\[\dot{f}(x)\] | \dot{f}(x) | 微分をドットで表すには\dotコマンドを使用します。二階微分なら\ddotコマンドです。 |
\[\vec{a}\] | \vec{a} | ベクトルなど文字の上に『→』を表示するには\vecコマンドを使用します。 |
\[\bar{a}\] | \bar{a} | 命題の否定や補集合を表す上線を表示するには\barコマンドを使用します。 |
2文字以上の装飾
多くの文字装飾コマンドでは記号の大きさが変化しないため、2文字以上にまたがる装飾には別のコマンドを使用します。
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\[\overrightarrow{MN}\] | \overrightarrow{MN} | 2文字以上にまたがる『→』を表示するには\overrightarrowコマンドを使用します。\vecコマンドでは\(\vec{MN}\)となってしまいます。 |
\[\overline{x+1}\] | \overline{x+1} | 2文字以上にまたがる上線を表示するには\overlineコマンドを使用します。\barコマンドでは\(\bar{x+1}\)となってしまいます。 |
装飾の高さを合わせる
何も考えずに文字装飾を使うと、文字の高さによって装飾記号の位置がバラバラになってしまいます。これを揃えるには\mathstrutコマンドを使用します。
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\[\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}\] | \vec{a}+\vec{b}+\vec{c}+\vec{d} |
\[\vec{\mathstrut a}+\vec{\mathstrut b}+\vec{\mathstrut c}+\vec{\mathstrut d}\] | \vec{\mathstrut a}+\vec{\mathstrutb}+\vec{\mathstrutc}+\vec{\mathstrutd} |
\mathstrutコマンドは、文字装飾だけではなくルートなど他の記号の高さを揃えるのにも使用できます。
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\[\sqrt{a}+\sqrt{b}+\sqrt{c}+\sqrt{d}\] | \sqrt{a}+\sqrt{b}+\sqrt{c}+\sqrt{d} |
\[\sqrt{\mathstrut a}+\sqrt{\mathstrut b}+\sqrt{\mathstrut c}+\sqrt{\mathstrut d}\] | \sqrt{\mathstrut a}+\sqrt{\mathstrut b}+\sqrt{\mathstrut c}+\sqrt{\mathstrut d} |
複数の数式を整列する
複数行の数式の記述の仕方としてalign環境についてはすでに紹介していますが、高校数学レベルで使いそうな応用例や他の環境についていくつか紹介します。
より詳しい解説は別記事で。
連立方程式
align環境と\left~\rightコマンドを組み合わせると、連立方程式などが記述できます。
例
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\[ \left\{ \begin{align} ax+by&=c \\ dx+ey&=f \end{align} \right. \] | \left{ |
式番号
式に番号を振るには\tagコマンドを使用します。自動採番ではありませんので、番号は1つ1つ入力する必要があります。
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\begin{align} f(x) &= ax^2+bx+c \tag{1} \\ g(x) &= px+q \tag{2} \end{align} | \begin{align} |
この例で判るように、\tagコマンドの番号は行末に表示されます。
場合分け
場合分けはalign環境を使用して記述することもできますが、専用のcases環境も用意されています。
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\[ |x|=\left\{ \begin{align} x & (x\geq 0) \\ -x & (x<0) \end{align} \right. \] | |x|=\left{ |
\[ |x|=\begin{cases} x & (x\geq 0) \\ -x & (x<0) \end{cases} \] | |x|=\begin{cases} |
この例で判るように、cases環境はalign環境と較べて
\left\{~\right.で括弧を表示する必要がない
&の左側の部分が左寄せになっている
&の右側に空白が挿入される
などの違いがあります。
array環境
ものを整列して表示させるのに、もっとも汎用性が高いのはarray環境です。
array環境の書き方は、
\begin{array}[pos][cols]
1行目 \\
2行目 \\
:
n行目
\end{array}
です。
posは行列と行列外の要素との縦方向の位置合わせを指定します。省略可能です。
指定可能な内容は、up(上揃え)・middle(中央揃え)・bottom(下揃え)です。省略するとmiddleになります。
colsは各要素を列ごとの位置合わせを指定します。こちらは省略できません。
指定可能な内容は、 l(左揃え)・c(中央揃え)・r(右揃え)です。1行の要素と同じ数だけlまたはcまたはr並べて記述します。colsの文字数よりも要素数の多い行があるとエラーになります。colsの文字数よりも要素が少ない行があってもエラーにはなりません。
行の各要素は&で区切って記述します。行と行の区切りは\\です。一番最後の行には\\を記述しません。
パラメータが多いので他の環境より使いこなすのが難しそうですが、連立方程式や場合分けなど様々な『ものが整列する』式を記述することができます。
以下は、array環境を使用して行列を記述した例です。
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\[ A=\left( \begin{array}{ccc} a & b & c \\ d & e & f \\ g & h & i \end{array} \right) \] | A=\left( |
関数
LaTeXの数式中では英字は原則として斜体(イタリック体)になります。しかし関数の名前などは変数と区別を付けて正体(ローマン体)で表示することもよくあります。LaTeXでこれを実現するには、
フォントを指定するコマンド(\mathrmなど)を使用する
関数を表示するコマンドを使用する
といった方法があります。以下に例を挙げます。
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\[sin x\] | sin x | sin xと記述すると関数名も斜体で表示されてしまい、1つづきの単語のように見えて読みにくいことがあります。 |
\[\mathrm{sin} x\] | \mathrm{sin} x | ローマン体を指定する \mathrm コマンドで、sinの部分をローマン体にしています。 |
\[\sin x\] | \sin x | よく使われる関数については、\sinのように専用のコマンドが用意されています。関数名の後にほどよく隙間が空くので可読性はもっとも高いです。 |
\[\log_{a}b\] | \log_a{b} | logも専用のコマンド\logが用意されています。底を表すには下付き文字の_を使用します。 |
\[\lim_{x\to 0}\] | \lim_{x\to 0} | limも専用のコマンド\limが用意されています。\limでは下付き文字_を使用するとlimの右下ではなく真下に表示されます。\toは矢印を表示するコマンドです。 |
例文
ここまでに紹介した構文を使った文章の例をいくつか掲載します。もっと高度な例はジャンル毎の記事を参照して下さい。
例1
\[
v(t)=\dot{x}(t)=\frac{d}{dt}x(t)=\lim_{\Delta t\to 0}\frac{x(t+\Delta t)-x(t)}{\Delta t}
\]
\[
v(t)=\dot{x}(t)=\frac{d}{dt}x(t)=\lim_{\Delta t\to 0}\frac{x(t+\Delta t)-x(t)}{\Delta t}
\]
物理で登場する速度の式です。文字装飾の\dot、関数の\limなどを使用しています。微分の\(\frac{d}{dt}\)は普通の分数と同じく\fracコマンドで記述しています。
例2
\(a>0, r>0\) のとき、
\[
\sum_{k=1}^\infty ar^k=
\begin{cases}
\displaystyle\frac{a}{1-r} & (r<1) \\
\infty & (r\geq 1)
\end{cases}
\]
\(a>0, r>0\) のとき、
\[
\sum_{k=1}^\infty ar^k=
\begin{cases}
\displaystyle\frac{a}{1-r} & (r<1) \\
\infty & (r\geq 1)
\end{cases}
\]
無限等比級数の公式です。大型演算子の\sumコマンド、場合分けを表すcases環境を使用しています。cases環境内の数式はインライン形式になってしまうので、\displaystyleコマンドを使用して分数をディスプレイ形式にしています。
例3
\[
\left(
\begin{array}{c}
x' \\
y'
\end{array}
\right)=\left(
\begin{array}{rr}
\cos\theta & -\sin\theta \\
\sin\theta & \cos\theta
\end{array}
\right)\left(
\begin{array}{c}
x \\
y
\end{array}
\right)
\]
\[
\left(
\begin{array}{c}
x’ \\
y’
\end{array}
\right)=\left(
\begin{array}{rr}
\cos\theta & -\sin\theta \\
\sin\theta & \cos\theta
\end{array}
\right)\left(
\begin{array}{c}
x \\
y
\end{array}
\right)
\]
回転行列の公式です。大きさの変わる括弧の\left~\right、数式の整列を行うarray、\sinなどの関数を組み合わせています。
最後に
これで高校レベルの数式までだいたい記述できるようになったと思います。
この記事中に掲載していない記号や文字を表示するコマンドは、本サイト内のリファレンスなどを参照して下さい。
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